2016年 09月 29日
剱岳八ツ峰-北方稜線 Alpine Scrambling at Mt.Tsurugi Day.2 2016/09/01-03



いよいよ二日目からが今回のトリップの本題であるルートの一つとなる八ツ峰。別山や劔沢、劔岳山頂からもよく見える恐竜の背びれを彷彿するような八つの針峰群の岩尾根であり北アルプスを代表する岩稜のクライマー向けバリエーションルート。そして、この岩尾根ルートを抜ける時間次第で北アルプスの秘境と呼ばれる北方稜線を通り、池ノ平山、仙人峠を経由して一気に真砂沢までラウンドしてくるルートを考えていた。


中身の濃い行程だけにアタックザックの軽い荷物だけで出かけられる程は甘くない(笑)結局のところ、もしものビバーク用具、クライミング用ロープ&ギア、クライミングシューズなどの登攀用具、ファーストエイドキット、アイゼン&ピッケル、水2リットル&行動食&もしもの食料を持って行かなくてはいけなかったので、真砂沢ベースにはメインの寝袋、マット、シェルター、最終日の行動食だけデポできるだけでそれほど軽量化ができなかった。
起床AM3:00、真砂沢キャンプ地を4:15出発。夜は7℃位までしか気温は下がらずで、SHMW / Sky High Down Quilt 120&KLYMIT / Inertia O Zone UL Minimalist快適に安眠できたのだが、気温プラス冷たい山からの風により、雪渓はええ感じで凍っており、アイゼンが良く効き登り易かった。ただ、アイゼン持ってこなかったら間違いなくアプローチ敗退となり登れなかっただろうね(笑)



前日に偵察していたので、すぐに目指すルンゼが分かったが、側壁の雪渓の雪が無さ過ぎて、岩の基部に取り付くのが少し苦労した。何せ、この隙間に落ちたら、戻って出てこれるかは分からないし...
クライミングシューズに履き替えるか迷ったが、行けそうなルンゼだったので二人ともにイノベイトで稜線に出るまでスラブを登り続けた。

































クライミングギアとしては各自で8mm×30mロープ、Petzl / Siroccoの僅か165gのヘルメット、こちらも僅か170gのダイニーマ製Blue Ice / コーカスハーネス、ビレーデバイス、環付きビナ&クイックドロー少々、そして、クライミングシューズ&チョークバッグと持って行ったが、結局、全てのセクションでクライミングシューズは使用しなかった。ただ、自分らも時間短縮でクライムダウンをある程度したが、合計10回以上は懸垂下降のラペルをしなくてはいけなかったので、ロープとビレーデバイスは必須(笑)ロープは何を持っていくか迷ったが、結局、軽量化で8mmを持って行って正解だった。もしもの時はツインで使えば困難なセクションは抜けれるし、二本をダブルフィッシャーマンで連結すれば安心の最大30mラペルが出来る。
合計8つの背びれのような針峰を登ってはラペルしたりクライムダウンをしたりして進んでいくので八ツ峰だが、実にカッコええ岩尾根である。途中から岩峰をカウントするのも億劫になり、冒険的クライミングに二人とも没頭したかったので、トポも全く見ずに今までの岩を見る目と経験、野生の勘をフル動員して、目の前のルートの最弱かつスピーディなルート取りで進んだ。後半になると、ブッシュも少なくなり、越えてきた岩峰群が足元に連なる光景を見たら、ココは日本ではなくヨーロッパやアメリカのアルプスかのような錯覚に陥った。



八ツ峰の頭に登りきると、目前にすぐ劒岳の山頂と逆側には北方稜線が見えた。
ほぼ10:00ちょうどくらいに八ツ峰の頭に着いたのだが、真砂沢からスタートして5時間45分ほど経過していた。登攀自体は全然難しくはないので、スクランブリングにフォーカスしたら、さらにギアの軽量化が図れタイムもまだまだ短縮できそうな感じ。少し、休憩してからAM10時ということで、まだまだ時間も体力も十分に北方稜線を周れるなと相棒と相談して、先を急ぐことにした。

八ツ峰を登った後の下山ルートとなる長次郎谷もご覧の通り全く雪渓が無い(笑)



池ノ谷乗越から、まるで岩雪崩かのように落ちていく池ノ谷ガリー経由で三ノ窓を目指す。目前に小窓ノ王と呼ばれる大きな岩峰を見ながら相棒がダウンヒルというか滑り落ちていく様はワイルドなアメリカのコロラドのレースを彷彿とする。しかし、日本でもこんなヤバいルート取りがあるのだから素晴らしい!



こんなとこ登れるん?ってなルート取りで小窓ノ王を登り、登りきった後の先ほど滑り落ちて行った池ノ谷ガリーが見えた。池ノ平山や小窓雪渓の方向から北方稜線を通り、劒岳を目指すのであれば、ここから池ノ谷ガリーを見ることになるはずだが、まさかあの崖崩れのようなセクションを進んで行くとは思えないだろう(笑)先人のこの数十年も前に、この秘境を最初に歩いたり開拓した人たちのルート取りのセンスは実に素晴らしい!






小窓ノ王を越えると、それまで岩だらけの威圧感を感じるダイナミックな景色から一転、小窓雪渓まではお花畑が続く快適なセクション。次の目指す山は池ノ平山へ!


しかし、この小窓から池ノ平山までの道のりが実にヤバかった。距離は大したことはないが、地図上では破線の上、さらに北アルプスの最奥地と言える場所でそう易々と山頂には辿り着かしてはくれなかった(泣)岩を登っては藪漕ぎ、しかも場合によっては背丈を越えるハイマツセクションもあり。四肢をフルに使って完全にハイマツスイミング(泣)写真も撮ってられない程にこのセクションで二人とも疲労困憊(笑)





なんとか、池ノ平山の山頂を通り抜け、眼下に赤い池ノ平小屋の屋根を見たら、なんとかテンションアップ!予想以上に長い下りを永遠と下りていくと、池ノ平小屋に到着。ここで13:00ちょい前でまだまだお昼過ぎなので余裕あり。ここで頂いた天然の湧き水が実に美味かった!!
今回登ってきたギザギザの八ツ峰の稜線が見えるが、こう見るとよくもまあこんなトコを進んできたもんだと(笑)


池ノ平小屋で少し休憩してからは、以前にも数回歩いたことがある仙人峠経由の仙人新道、近藤岩がある二股、そしてゴールの真砂沢キャンプ地となる。
あとは最後の下り基調でゴールだと思った途端、二人ともラストスパートがかかり、池ノ平小屋から真砂沢までのコースタイム4時間10分ほどのコースを1時間20分で下りて戻ってこれた。人間やればできるもんです(笑)
結局、真砂沢で始まり、八ツ峰を登り、北方稜線池ノ平山経由で真砂沢ラウンドコースで計10時間ほどのタイムで帰ってこれた。次回は9時間切りくらいを目指すかな(笑)なんだかんだで、8kg前後ほどの荷物を背負いながらの山行だったのでなかなか上出来。前半は雪渓登りから始まり、八ツ峰では終始クライミングが味わえ、北方稜線ではテクニカルな岩稜に藪漕ぎ、後半はこれでもかってほどのダウンヒルにシングルトラックの走りが堪能でき、これぞオールマウンテンランニングルートとなった。
朝一番で出発したおかげで、14時過ぎには真砂沢に帰ってこれたので、翌日のためにゆっくりレストができた。そして、真砂沢ロッジのご主人と今回の山行の話をしたら、やるなお前ら!ということで、山の中では貴重なビールをそれぞれに頂いた(笑)ありがとうございました!!!
この日の夜は他に数組が翌日の山行に備えて、キャンプ地にテントを張っていたが、混雑とは無縁の平日のキャンプ地だった。夕方からビールに持ってきたつまみで乾杯して、美味しいフリーズドライのカレーをたらふく食いまくり、翌日もまたAM4:00起床で最後のプランをコンプリートしないといけないので、この日も早めに就寝(笑)