2016年 10月 01日
北岳バットレス Alpine Scrambling at Kitadake Buttress 2016/09/27-28
東京に住んでいた頃も結局は登山でも行ったことがなかった、富士山の次に高い日本第二の高峰、北岳(3,192m)。この山頂の東面頂上直下に広がる巨大な岩場が北岳バットレス。バットレスとは建築用語で「控壁」の意味らしいが、北岳の山自体を柱のように支えている岩壁ということで、このバットレスと古くから呼ばれているよう。今回スクランブリングのスピードスタイルで登りたかったルートは、日本アルプス最高峰の頂を支えている日本でもおそらくクライミング界で一番有名な第四尾根というラインである。
今回はスクランブリングは自分とKensukeでの行動だが、嫁さんはソロで北岳ラウンドでトリップを楽しんだ。経費削減で大阪から甲府まで片道4,000円弱の夜行バスで9時間。甲府から南アルプス玄関口となる広河原までバスで2時間の合わせて11時間というロングアプローチ。あらためて関西からだと南アルプスは遠いなと(笑)
早めのお昼ご飯を食べてから、広河原からキツい急な樹林帯の尾根をひたすら登り続ける。
1時間半弱ゆっくり登り切ったら、今回のベースとした白根御池小屋キャンプ地に到着。バックパックも前回の剱岳山行同様のOMM / Villain45+10だが、今回は雪渓アプローチが無い分、アイゼンなどが無くて幾分軽い。早速、今回のベーステント設営に取り掛かる。
シェルターの新兵器はJAPANブランドHERITAGEのクロスオーバードーム。初回発売後に人気過ぎて、全然生産が間に合わず、雑誌の広告には出てるが、メーカーもお店も現在は全く在庫なし状態。Black Diamond / Firstlight同様シンプルなアルミポールのクロスシステム自立の底ありシェルター。収納袋、ポール入れて全て込みで総重量700gというなんとも軽量なテント。おまけに一人用として使用すると広すぎるくらいの居住空間で、軽量化を重要視する山行では二人で全然就寝できるという居住空間。今回は雨の予報だったので、テスト兼ねて嫁さんと使用したが、二人でも全く問題なし。軽量化にネックとなるポールも通常のものより径の細いアルミ中空ポールを使っており、これのおかげでパッキング時も嵩張らない。それでいて、カーボンポールより、7001のアルミの型番なんで耐久性という部分でも安心感あり。ボディ生地は透湿性8,000の透湿PUコーティングのおかげか、左右ベンチレーションを全開開けて寝たからなのかは分からないが、気温7℃前後位まで下がっただけでシェルター内が全く結露しなかったのにはびっくり。この手の生地はツェルトと一緒なので、結露は当たり前と思わないと使用なんてできないので、たまたまかもしれないがスゴい!もちろん、雨が降っても全ての主要縫製部分にはシーム処理されているので、ツェルトや床なしシェルターと比較すると安心感ありの天国です。このスペックで35,000円+税という買いやすい価格なんで、軽量化志向のファストパッキングなどの初めて買うシェルターとしてバッチリ!もちろん、BCやアルパインクライマーのコアな経験者にもバッチリかと!すでにストックシェルターの展開は始めていますが、SHMWも10月半ばよりこのクロスオーバードームも販売しますのでご興味ある方はどうぞ!ちなみにまた秋の生産も少なくて、うちにも数張しか入荷してこないので早いもの勝ちですのでお早めに(笑)
シェルター設営後は翌日のスクランブリング山行のアプローチのチェックへ!午前中は良かった天気も早くも下り坂のようで、下からも山の上からもガスが出始める(泣)紅葉もボチボチ始まってきており、晴天だったらさぞかし山の色が綺麗だったろうなと。途中、良さげなボルダーも発見!
大白樺沢沿いのトレイルを上がり、二股を越えてからは、ヒドンガリー、バットレス沢、C沢と3つの沢を越えてすぐのD沢からアプローチ。少し上がったところからC沢との間の急なクライマー用踏み跡を上がっていったらドンピシャで第四尾根の取り付き下部岩壁に辿り着いた。これで翌朝の暗いうちから壁に取り付けると!
帰りは暗くなる前に少しだけ時間が残ったので、目星をつけていたボルダーで持ってきたクライミングシューズ&チョークバッグでセッション。名もなきグレーディングもされていないボルダーを掃除して登ることほど楽しいことはない。取り付いてみると、予想以上に傾斜もホールドもありかなりオモロイ!マットが無く、下地も良くないところもあり、今回登れなかったラインが幾つも有ったので是非これを登るだけでもまた来たいなと。
キャンプ地に戻った後は、お楽しみのディナータイム!とは言っても、お馴染みのフリーズドライのカレーだが、これに今回は山荘でGETしたビールに、持ってきたワイン、焼酎、おつまみと翌日に支障がないよう(笑)みんなでアウトドア業界話で盛り上がった。
翌朝はまたAM3:00起床の4:00過ぎ出発。最近は専ら、簡単で美味しく腹持ちが良いので朝一番でお湯を沸かしてからおにぎりをその場で1-2個食べて、行動食用にもう一つ作っておくという朝のスタイルが確立。朝食のお供には起床すぐは体温が下がっているので、身体を中から温めてパフォーマンスを早く上げれるようにスープか味噌汁、最近は永谷園の松茸お吸い物がお気に入り(笑)それでも暖まらない位に寒い気温時は腹筋&腕立て&木でぶら下がりからの懸垂に限ります(笑)
ちょうどキャンプ地からほぼ1時間のアプローチで下部岩壁取り付きに到着!と同時にラッキーなことに朝焼けの時間!
いよいよ第四尾根に向かってスクランブリング登攀開始!最初のピッチはInov8 / X-Talon200でOK!だが、先日訪れた剱岳周辺の岩場と比べると、岩は硬いが御岳ボルダーなどの河原のチャートっぽい岩質のため、予想以上にエッジングが必要な細かいスタンスが多々あり、きちんと足先に体重移動しないとツルツル滑るので、トレイルランニングシューズでは危険を感じた(笑)
登りだしから5分後くらいから、一気に上から下から霧が立ち込めてきた。そして、こんな経験はまだ一回もないが、霧の中に少しの間だけ太陽が姿を現して幻想的な空間の中でスクランブリングが出来た。この光景にはびっくり且つ感動したな。
Dガリー直上はせず、今回は最弱ラインということで、途中からバンド右に横断。
横断バンドからC沢上部に移り、いよいよ第四尾根主稜へ!そこからは晴天であれば青空の中、正にアルパインスクランブリングという世界が広がっているはずだったが、ガスにより上も下も視界悪し(泣)おかげで幻想的なスクランブリングになったと言えばそうなのだが。さすがに、この辺からは霧により岩も湿気てきて、岩も細かいスタンスが多くなりそうで危険なので、ここからクライミングシューズへ変更。ここから本格的なクライミングセクションとなり、二人してテンション上がって、このクラックバチ効きやわ!とか言いながら、ロープやビレーは一切せずグイグイ登っていく(笑)結局、マッチ箱のコルと呼ばれる部分から20mほどの懸垂下降時のみロープを使用した。
あっという間に、枯れ木のテラス上部に上がったら、そこは2010年の壁大崩壊の現場!確かにヤバイくらいに壁の大半が根こそぎ落ちている(汗)ココの落ち去った岩のナイフリッジの岩尾根を左にトラバースしていくのだが、個人的にはこのセクションがホンマに岩は安定してんのか?という気持ちに、どちらの方向に足を滑らせたら正にサヨウナラというシチュエーションでテンションMAXだった(笑)
ナイフリッジトラバース後は、最後に被ったチムニーが待っていたが、これがまたチムニー内部のクラックやホールドが濡れていて、結構苦戦してヤバかった(汗)なんとか、ビレーはせずロープレスで今回はフリースクランブリングをしたかったので、一度クライムダウンをしてから慎重に登り返した。濡れてたんでなんともだが、この最後の最後のセクションは何気に侮れませんのでお気をつけを。
最後の岩場セクションを越えてからは、あとは真っ直ぐ顕著な踏み跡を5分位辿っていくとそこは3,192mの北岳山頂となる。結局、アプローチ1時間、そして、北岳山頂までスクランブリング登攀タイムとしては2時間でフィニッシュできた。
するとその山頂へ待ち合わせもしていないのに、ソロで八本歯のコル経由で北岳山頂ラウンンドを走るという予定を立てていた嫁さんと山頂でバッタリ(笑)スゲータイミング(笑)
ちょうど山頂の稜線に上がった頃からのタイミングで雨や風が強くなり、これから荒天模様(泣)午後からの雨予報だったが、かなり早まっている模様なので、三人で調子良く、肩の小屋経由でキャンプ地の白根御池小屋へ下山。タイミング良く、キャンプ地からはしばらくの間だけ晴れ間が覗いたりして、山々の紅葉が見えたりしたが、午後からは本格的な雨になりそうなので、急いでテントを撤収して広河原へ戻り、その日の夜行バスで芦屋への帰路に着いた。
一泊二日の弾丸南アルプストリップだったが、今回は贅沢言わずに、この最近の天気悪い中でいいタイミングで内容濃い山行が出来たかな。また、次回は是非とも青空の下でSky Highテキなスクランブリングで更にタイムを縮めたいし、さらにバリエーションルートで遊びたい。嫁さん、Kensuke氏お疲れ様でした!